【※涙の物語】「クレヨンしんちゃん22年後の物語」ファンが作った作品が公開され、日本中が涙!!

朝ご飯を食べた後で、居間でまったりしていたオラとひまわり。

目の前のテレビでは、朝のワイドショーが芸能人のスクープを取り立てていた。

何でも、俳優の藤原ケイジとアンジェラ小梅が、またもや破局したとか。

何度目だ、藤原ケイジ。

そんな緩やかに時間が流れる室内に、突如けたたましくドアを叩く音が響き渡った。

「な、なんだ?」

おそるおそる玄関に近付き、ドアを開ける。――と同時に、とある女性が飛び込んで来た。

「――か、匿って、しんのすけ!!」

その女性は、室内に入るなり、ぜえぜえと息を切らしていた。

「む、むさえさん!どうしたんですか……」

オラの問いかけに、ひまわりが反応する。

「え!?むさえおばさんが来たの!?」

「おばさんって言うな!……それより、お茶くれ。喉がカラカラで……」

何事だろうか……オラとひまわりは目を見合わせた。そして仕方なく、むさえさんにお茶を差し出した。

「――ぷはぁー!生き返ったー!」

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コップのお茶を一気に飲み干したむさえさんは、元気に話す。

「……それで?どうしたんですか、むさえさん?」

「え?あ、ああ……ちょっと、避難を……」

むさえさんの言葉に、オラは頭を抱える。もう、何度も聞いてきた言葉だった。

「……またですか。今度はなんですか?お見合いですか?」

「めんどくさそうに言うな!……まあ、父さんがお見合いを勧めてきたのは合ってるけどね……」

むさえさんは、少しばつが悪そうに呟く。

「そりゃそうでしょ。むさえさんも、いい加減結婚しないと」

「そうそう。むさえおばさんもいい歳でしょ?」

オラの言葉に、ひまわりが続く。

「と、歳の話はやめい!それに、おばさんって言うな!――私はいいの!写真に生きるの!」

……むさえさんは、プロの写真家になっていた。
たまに写真展を開いては、そこそこ儲けているらしい。ただ、元来適当な性格もあって、開催は不定期。今では完全に、放浪の写真家となっていた。
腕は認められてるのに、実にもったいないと思う。ただ、これだけ自然体だからこそ、いい写真が撮れるのかもしれない。

芸術家とは、かくも面倒な存在なんだろうな。

「……まあ、身を隠すだけならいいけど。それに、いくら九州のじいちゃんでも、さすがにここにいるなんて……」

プルルル…

突然、家の電話が鳴り始める。

「……まさか……」

「……ひょっとして……」

「……う、ウソでしょ……」

オラたち三人に、緊張が走る。
ひまわりとむさえさんにアイコンタクトをした後、オラが電話に出た。

「……も、もしもし……」

「――ああ、しんのすけか。九州のじいちゃんたい」

「―――ッ!」

「むさえに伝えてくれんね。――いい加減、諦めて九州に戻れとな。頼んだばい」

そして、電話は切れた。

呆然とするオラに、ドアの陰に隠れたむさえさんがおそるおそる顔を覗かせた。
どうだった?――そう言わんばかりの顔をして、オラに注目する。

オラは静かに、親指を立て、アウトのジェスチャーを取る。
それを見たむさえさんは、一人、ムンクの叫びのような顔をするのだった。

「と、父さんにバレてたとは……」

むさえさんは、居間の中央で項垂れる。

「……まあ、親子ってことじゃないの?」

「さすが九州のじいちゃんね。むさえおばさんの行動パターンを読んでる……」

ひまわりは腕を組みながら、感慨深そうに呟く。

「――こうしちゃいられない!」

むさえさんは、さっさと荷物をまとめて玄関に駆け出した。

「え?もう帰るの?」

「まあね!父さんに居場所がバレてるなら、長居は無用!」

むさえさんは急いで靴紐を結ぶ。と、その時――

「――あ、そうだった。はい、しんのすけ」

むさえさんは、オラに封筒を手渡してきた。

「これ……」

「少ないけど、なんか美味しいのでも食べなよ」

むさえさんが渡してきた封筒には、けっこうな額のお金が入っていた。

「……こんなの、受け取れないよ……」

「そう言うなって。親族からの気持ちだから、素直に受け取りなさい。アタシも無名だったころに、散々みさえ姉さんに援助してもらってたしね。それを返してるだけなんだよ。
……それに、しんのすけ達の元気そうな顔を見れたから、それでいいの」

むさえさんは、優しくそう話した。

「……もしかして、むさえさん。オラたちの様子を見に……」

オラの言葉に、むさえさんは照れ臭そうに頬を指でかく。

「……まあ、アンタ達に何かあったら、あの世でみさえ姉さんに合わせる顔がないしね……」

「むさえさん……」

「――そろそろ行かなきゃ!じゃあね!!」

そう言い残すと、むさえさんは出ていった。

「……なんか、カッコよくなったね、むさえおばさん……」

オラの後ろから、ひまわりが呟く。

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