「……お、お兄ちゃん……」
ひまわりは、顔を真っ青にして震えていた。
そんなひまわりの顔を見ていないのか、四郎さんは、生気のない顔のまま前を見ていた。
……あの後、オラたちの元へひまわりが来た。
そして彼女は車椅子を降ろされ、人質となった。
歩けない彼女がいる状況に、下手に動くわけにはいかなかった。
オラは四郎さんの指示に従い、どこへ向かうのか分からないまま、車を走らせていた。
「……四郎さん。とにかく、一度落ち着いて……」
「――いいからッ!!……今は、黙って運転しててよ。しんちゃん……」
「……分かりました」
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今は、刺激しない方が良さそうだ。
オラはそれ以上のことは言わず、ただ車を走らせる。
……それにしても、四郎さんは、いったいどうしてこんなことを……
最後に会ったのは、オラが小学校に入校したくらいだろうか……
あれから、四郎さんに、何があったのだろう……
様々な疑問が浮かぶ。当然、答えなど分からない。
今はただ、ひまわりの身の安全のために、車を運転するしかなかった。
四郎さんの指示のもと、辿り着いたのは山間にある廃屋だった。
今日は雲が出ているのか、星の灯りはほとんどない。辺りは漆黒の闇に閉ざされ、木々がどれ程あるのかも分からない。今ある光は、四郎さんが持ってきた懐中電灯だけであった。
薄気味悪さもあったが、それ以上にこれからのことが怖かった。
オラとひまわりは、そこにある柱に縛り付けられていた。
「……本当にごめんね、しんちゃん、ひまわりちゃん……」
「……謝るくらいなら、解放してください。そして、一緒に自首しましょう。こんなことをしても、いずれ必ず捕まりますよ」
「……うん、そうかもね……。でも、僕はもう人を刺したんだ。……もう、引き返せないよ……」
「……四郎さん……。ならせめて、ひまわりだけは解放してください」
「お、お兄ちゃん!?」
「ひまわりは見ての通り、歩くことが出来ません。このまま一緒に行動しては、必ず足手まといになりますよ」
「………」
……自分で言った言葉に、胸が痛んだ。
――“歩けないひまわりは、足手まとい”――
本当は、口が裂けてもそんなことは言いたくなかった。
そんなこと思っていない。だけど、彼女が解放されるなら、その可能性に賭けてみた。
……だが四郎さんは、頷くことはなかった。
「……キミ達は、大切な人質だからね。悪いけど、解放はしないよ……」
(……くそ……ダメか……)
とにかく、四郎さんの狙いが分からない。
それを探るべく、オラは再び話しかけた。
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