――その姿はまるで、太陽と木々のようだった。
「………」
「………」
気まずいのだろうか。二人とも、全然動こうとしていない。
しばらく時間が経ったところで、ようやく風間くんが少しだけ顔をオラに向ける。
これはどういうことなんだ―――そう言わんばかりに、チラチラとオラの様子を窺う。
風間くんも、かなり混乱しているようだった。
「……やり直しだよ、風間くん」
彼に、助け舟を出す。
「……え?」
「あの日のやり直し。もう一度、ここから始めるんだ」
「……で、でも……」
「ひまわりにもあるんだよ。本当に言いたかった言葉が。キミにもあるはずだ。本当は聞きたかった言葉が。
この前は、ちょっと決断が早かっただけなんだ。きっとキミらは、同じ未来を見てるはずなんだ」
「……しんのすけ……」
「オラに出来るのは、ここまでだ。風間くん、キミさえ良ければ、もう一度伝えてほしい」
「……」
風間くんは何も言わない。だけど、その表情は、確かに何かを伝えていた。
そして彼の目は、不思議とオラを安心させた。
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「……ひまわり。本当にオラのことを考えてくれるなら、お前が思うようにしろ。お前の願いを、口にするんだ」
「……お兄ちゃん……」
ひまわりは、潤んだ瞳でオラを見る。もしかしたら、まだ悩んでいるのかもしれない。
……だから、もう少し背中を押すことにした。
「……大丈夫。ひまわりがどういう返事をしても、お兄ちゃんはもう怒らないよ。
お兄ちゃんは、ずっとひまわりの味方だ」
「……うん……」
そしてオラは、その場を立ち去る。
オラが歩き出すと、二人はまたお互いを見つめ合っていた。
それからどういう話になったのか分からない。二人が、どういう言葉を送ったのか分からない。
……だけど、それはオラが干渉するべきではないことだろう。それに、きっと二人なら、オラなんか必要じゃない。必要ないんだ。
少し寂しくはあるけど、それでも暖かい。
どこかすっきりした気持ちを胸に、オラは家に帰った。
……それから1週間後、風間くんはオラの家に来た。
そして、彼はひまわりと一緒に、オラに結婚することを告げた。
「……そうですか……風間くんとひまわりちゃんが……」
会社の椅子にもたれかかっていたあいちゃんは、オラの言葉を呟く。
表情は、どこか安堵していた。
「式は、近親者だけでするって。あいちゃんにも招待状が届くはずだよ。かなり急な日取りだけど……風間くん、時間ないし……」
「……そうでしたね。風間くんは……」
ふと、あいちゃんは表情を伏せる。
祝福したいが、素直には出来ない……そう言った顔をしていた。
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