「――まさおくん?」
「――ィヒイイィイイッ!?」
あれだけ周りを気にしていたのに、背後に近付くオラに全く気付かなかったのだろうか。
付近に響き渡るほど、まさおくんは絶叫した。
振り向いたまさおくんは、オラの顔を見て胸を撫で下ろす。
「……なんだ、しんちゃんか……もう、脅かさないでよ……」
「いやいや、驚いたのはこっちの方だぞ。ていうか、何してるの?」
その問いに、まさおくんは少しだけ躊躇した。そして、曲がり角の先を顎で示す。
「……あれだよ」
「あれ?」
まさおくんに指示されるがまま、オラはその方向を注視した。
「……あれは……ねねちゃん?」
その先にいたのは、ねねちゃんだった。そして彼女の隣には、見覚えのないイケメンが。
二人は、談笑しながら歩いていた。
「……まさおくん。これって……」
「………」
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まさおくんの顔は、この世の終わりのように沈んでいた。
オラとまさおくんは、近くの喫茶店に移動していた。
まさおくんは、テーブル上に項垂れていた。
「……まさおくん、大丈夫?」
「うん……なんとか……」
よほどショックだったのだろうか。声に全く生気を感じない。
魂だけ、上空3000mまで旅立ってるようだった。
「……しかし驚いたな。ねねちゃんが、あんな男の人と歩いていたなんて……」
その男性は、男のオラが見てもイケメンだった。
少し色黒ではあったが、黒色単髪の爽やかフェイス。笑顔の中にはキラリと白い歯が光る。高身長で足も長く、スタイルもいい。痩せているが、貧相な体ではない。いわゆる、細マッチョと呼ばれるものになるだろう。
まさに芸能人も真っ青なくらいのイケメンには驚いたが、それ以上に、ねねちゃんが二人で歩いていること自体に凄まじい衝撃があった。
二人の様子を思い出していたオラに、項垂れたまま、まさおくんが言い始めた。
「……あの人、ねねちゃんの仕事場の保育士さんなんだ……」
「ねねちゃんの職場って……フタバ幼稚園?」
「うん……。前に、見たことがある……」
「保育士さんねぇ……」
あれだけのイケメンの保育士なら、保護者(ほぼ母親限定)からは、絶大な人気を誇ってるだろう。
「……あの二人、いつもああやって二人で帰ってるんだよ……仲良く、話しながらね……へへへ……」
「そ、そうなんだ……」
どうでもいいけど、まさおくん、顔がミイラみたいになってるよ。
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