「――おかえりー」
ドアの音を聞いたのか、ひまわりは奥から出て来た。
「うわっ!ずぶ濡れじゃない!お兄ちゃん、傘持っていかなかったの!?」
雨に濡れたオラに、ひまわりは驚いていた。
しかしオラの耳は、彼女の言葉を素通りさせる。
ひまわりの顔を見た瞬間、風間くんの言葉が脳裏に甦っていた。
―――彼女、泣きながら言ってたよ。“お兄ちゃんを一人には出来ない”って―――
「……ひまわり……」
無意識に、口が動いた。
「うん?なぁに?」
一度目を閉じ、頭の中の想いを整理する。
ひまわりの言葉、顔……そして………
「――この家を、出ていけ………」
「……え?お、お兄ちゃん……?」
「聞こえなかったのか?――この家を、出るんだ」
「……!」
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ひまわりは顔を青くし、激しく動揺しているようだった。
それも当たり前だろう。
ひまわりとはケンカをすることはあっても、ここまでの言葉を口にしたことはない。
にも関わらず、ケンカらしいケンカもしていない今、唐突にそう言われて混乱しているのだろう。
なぜ、オラがそんなことを言ったのか分からない。
なぜ、そう言われたのか分からない。
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ……きっと彼女の頭のなかは、そればかりが漂っているだろう。
気が付けば、彼女は涙を流していた。
「……ひまわり……今日、風間くんと会ったよ」
「……!」
「プロポーズ、断ったそうじゃないか……なぜだ?」
「……だ、だって……それは……」
「風間くんが、嫌になったのか?」
「そ、そんなんじゃないよ!……そんなんじゃ、ないけど……」
(……即答、か……)
これで、確信した。
それと同時に、言い知れぬ怒りのような思いが沸々と生まれていた。
「……悪いな。全部教えてもらったよ。風間くん、なかなか言わなかったけどな。
――ひまわり、オラを気遣って断ったんだろ?」
「――ッ!そ、それは……」
「――ふざけんなよッ!!!」
「――ッ!」
ひまわりは、体を震わせた。
「それでオラを気遣ったつもりか!?オラのためになると思ったのか!?
――オラを理由に使っただけじゃないか!!」
「ち、違う!」
ひまわりは、慌てて声を出す。
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