(……まさおくん。どうやらキミは、身も心も完全に負けているようだよ……)
心を色で表現するなら、この人は間違いなく白だ。そしてまさおくんは、どこまでも深い深い黒だろう。
(……明日、店を予約するか……)
その時点で、まさおくんを元気づける会の開催は、決定した。
「――あ、僕はこっちなので……」
三叉路に差し掛かったところで、イケメンはオラとは別の方向を指さした。
「わかりました。お仕事、お疲れ様です」
「いえ、しんのすけくんこそ。また今度、園に遊びに来てくださいね。桜田先生も、きっと喜びますよ」
「そうさせてもらいます。……あ、そう言えば、まだお名前を……」
「……え?」
イケメンは、驚いたように立ち止まった。
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「……ええと……」
「……やだなあ、しんのすけくん。僕ですよ……」
「……ぼ、僕?」
「忘れちゃったんですか?――バラ組の、河村やすおです」
「河村やすお?……って、もしかして……チーター!!??」
「あ、そのあだ名、懐かしいですね」
イケメン改め、チーターはクスクスと笑う。だからなぜ一つ一つの動作が、そんなにイケメンなのか……
(チーターって……えええええ!!??別人過ぎるだろ!!!!)
あまりの衝撃にフリーズしていると、チーターは手を振って帰り始めた。
「では、僕はこれで……」
「あ……はあ……」
衝撃から依然として解放されなかったオラは、力なく手を振り返すしかなかった。
……時の流れは、チーターをイケメンにメガ進化させたようだった……
「――しんちゃん聞いてよ!!」
それから数日後の夜、まさおくんは血相変えて家に飛び込んできた。
靴を乱雑に脱ぎ捨てたまさおくんは、そのまま居間にいたオラの元へ駆け寄る。
「あ、あの男のことを調べたんだけど……!!」
調べた結果……そんなもの、分かりきっていた。
「――チーターだったんでしょ?」
「そうそう!あの男、実はチーター……!!……って、何で知ってるの?」
まさおくんは、目を丸くしていた。
「この前、たまたま会ったんだよ。ねねちゃん、オラ達のこと話してたみたいだよ?」
「え!?ねねちゃんが、僕のことを!?」
(オラ達って言ったのに。ずいぶんポジティブなことで)
「で!?どうだった!?」
「どうって……」
「チーターだよ!話したんでしょ!?」
「ああ、そういうこと。少ししか話してないけど、いい奴だよ、彼」
無駄にイケメンだったけど。
「しんちゃん!騙されてるよ!」
まさおくんは激怒した!
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