「河村先生!手伝って!」
「手伝うのはいいけど、最後は自分でしなきゃだめだよ?」
「河村先生!僕も!」
子供たちは、しきりにチーターを呼んでいた。そこにいるのは、間違いなく、生徒から慕われた優しい先生の姿だった。
「河村先生も、物凄く子供に懐かれていますよ。やさしくて、かっこよくて……人気の的なんです」
園長先生は、満足そうにそう呟く。
その姿で、ひとつ確信したことがあった。
チーターは、心に黒い一面があったり、裏の顔があったりしない。ありのままの姿を見せている。
子供は敏感だ。少しでも隠していることがあったり、得たいの知れない何かを持ってたりするなら、絶対にああして笑顔で近づくことはない。
ありのままの姿を見せているからこそ、子供たちは安心して、彼のもとに集まるんだ。
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「……チーターは、いい先生ですね……」
「……ええ。本当に立派になりました。私は、彼の園長であったことを誇りに思います」
俺の言葉に、園長先生は幸せそうに返事を返した。
「……」
……一方まさおくんは、相変わらずこの世の終わりのような顔をしていた。
チーターの、あまりの眩しい笑顔に、圧倒されているように思えた。
(……哀れ、まさおくん、か……)
「――いっくよー!」
チーターは、子供たちに向けてサッカーボールを蹴る。きれいな放物線を描いたボールは、ワンバウンドして子供たちの方向に飛んでいった。
子供たちははしゃぎならボールを追う。実に、微笑ましい光景だった。
授業が終わったあと、幼稚園の校庭で、子供たちは先生たちと遊んでいた。
そしてそこには、普段はいない者の姿も……
「――いっくよー!」
まさおくんは、子供たちに向けてサッカーボールを蹴る。低い弾道のボールは、まったく別のあさっての方向に飛んでいった。
「もう!まさおお兄ちゃん!ちゃんと蹴ってよね!」
「うぅ……ご、ごめん……!」
まさおくんは半泣きになりながら、茂みの中に入り込んだボールを回収していた。
オラとまさおくんもまた、子供たちと遊んでいた。
子供と遊ぶのは、正直にいえば疲れる。彼らは疲れを知らず、全力で向かってきていた。
でも、その屈託のない笑顔と声は、自然と心を和ませる。悪くない。
「まさおくん、ちっとも変わっていないわね」
その光景を見ていたオラに、ねねちゃんは近づき話しかけてきた。
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