「……ところでお兄ちゃん」
「うん――?どうした?」
「お兄ちゃんさ、今年で27だよね?」
「……まあな」
「――結婚とか、考えてないの?」
「………相手がいれば、いつでもしてやるけどな。そういうお前はどうなんだよ」
「私?私は、まだ早いよぉ。だって、まだ22歳だし」
「結婚まではしなくても、付き合ってる男もいないのか?」
「う~ん……言い寄って来る人はいるんだけどね……どれもいまいちというか、パッとしないというか……」
「………」
誰に似たのか、ひまわりは、凄まじくモテるようだ。まあ確かに、顔は兄のオラから見ても、かなり美人の分類に入ると思う。
何気にスタイルもいい。
男にモテるのも、仕方ないのかもしれない。
もっとも、純情ピュアってわけではなく、何というか、ザァーッとして、竹を割ったような性格だから、下手に言い寄られてもまるで相手にはしないようだ。
変な男に捕まらない分、安心はしている。
[add]
「……まあ、そろそろお前も結婚考えろよ?母ちゃんは、お前くらいの時に結婚してるんだからな」
「それはお兄ちゃんも一緒でしょ?さっさと結婚しないと、一生独身の寂しい人生しか残ってないよ?」
「やかましい。ホラ、早く上がれよ」
オラは、居間に戻った。
風呂に入った後、居間でテレビを見ながら、ぼんやりと昔のことを思い出していた。
――父ちゃんと母ちゃんは、オラが中学の時に事故で他界した。夫婦水入らずで旅行に行く途中のことだ。
それから、秋田と熊本のじいちゃんばあちゃんが、オラとひまわりをそれぞれ引き取る方向で話が進んでいた。
……でも、ひまわりが、オラと離れて暮らすことを激しく抵抗した。
ひまわりにとって、親しい家族は、オラだけだった。
オラまでいなくなってしまう――小学生だったひまわりは、そう思ったのかもしれない。
結局オラとひまわりは、この家で過ごすことになった。
オラはそれまで、色々バカをやっていた。
でも、もう父ちゃん達はいない。ひまわりを育てるのは、オラの役目になる。
それ以降、オラは徹底して父ちゃん、母ちゃんになった。
最初の方、ひまわりが動揺していたのは、今はいい思い出だ。
じいちゃんたちの支えもあって、オラは高校を卒業することが出来た。
それからすぐに就職して、今に至る。
爺ちゃんたちは、大学へ行くように勧めて来た。
でも、それも断った。
いつまでもじいちゃんたちに負担をかけるわけにはいかなかったし、ひまわりの学費も工面しないといけなかった。
その決断に、悔いはない。もっとも、ひまわりも大学に行かずにアルバイトをし始めてしまったから、結局無用な心配だったが。
「……結婚、か……」
ふと、ひまわりに言われたことを思い出した。
結婚と言えば、忘れもしない出来事がある。
続きをご覧ください!