「えええええええええええええ!!??あいちゃん!!??」
誰もいないはずのオラの家には、いるはずのない、あいちゃんの姿があった。
オラは慌てて、あいちゃんに詰め寄った。
「まあしんのすけさん、すごい汗……」
「え!?あ、ああ、ちょっと街中を走り回って……って、そうじゃなくてっ!!!
あいちゃん!!こんなとこで何してるの!!??」
「何をしているのか、と言われましても……。あ、そういえば、自宅の鍵を玄関のポストに入れておくのは、少しばかり無用心ですよ?」
「あ、ああ、ごめん………ってそうじゃなくてっ!!!
会社はたいへんなことになってるよ!!??ほら!すぐに一緒に会社に―――!!」
「――しんのすけさん」
「―――ッ!?」
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突然、あいちゃんはオラの言葉を遮った。その言葉には、どこか迫力があった。オラは思わず、続きの言葉を飲み込んでしまった。
「……しんのすけさん、確かおっしゃってましたよね?出来るだけ、力になると……」
「……あ、ああ。言ったのは言ったけど……」
するとあいちゃんは、再びオラに笑顔を向けた。
「――でしたら、私と一緒に、駆け落ちをしてくださいませんか?」
「…………へ?」
……あいちゃん、今何か、口走ったような……
確か……駆け落ち、とか……
「……って、えええええええええええええええええ!!!???」
彼女の言葉を理解した後、本日二度目となるオラの叫びは、家中に響き渡るのだった。
「――私、こうして普通の電車に乗るの、初めてです!」
「へ、へえ……」
「少し遅くて揺れてますけど、こうしてゆっくり旅が出来るのも悪くはありませんね!」
「そ、そうだね……」
あいちゃんは、少し興奮気味だった。
オラ達が乗るのは、地方のローカル線……平日だったこともあり、乗客はまばらだ。
ぼやぁっと窓の景色を見ていたが、最初都会だった景色も徐々に建物の数が減っていき、今では長閑な景色が広がっている。
こうして景色が移り変わる様は、もしかしたら人生に通じるものがあるのかもしれない。
そんな柄にもないことを、頭の中に思い浮かべていた。
そんなオラとは違い、あいちゃんはどうやらこのローカル線というものが、よほど新鮮だったようだ。
椅子に座りながらも、一生懸命
に首を伸ばして、窓の外を眺めていた。
……なぜオラ達が、こうして電車に揺られているかというと、あいちゃんの頼みだったからだ。
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