やはり、何かあるようだ。しかも、オラに言いづらい何かが……
それが何なのかは分からない。分からないけど……
(……とりあえず、様子を見るか)
もしかしたら、お金に困っているのかもしれない。
こう言ってはなんだが、彼の姿を見る限り、普通の暮らしをしているとは考え難い。
それならそうと言ってくれればいいのだが……まあ、そこは本人の口から言うべきことだろう。
オラはとりあえず、テレビでも見て待つことにした。
テレビでは、夜のワイドショーが流れていた。
特に見たい番組もなかったし、ぼーっとしながら眺めていた。
芸能人の噂、スポーツの結果、特集……いつもと変わりないような、極々ありふれた話題が放送されていた。
そして番組は、ニュースに変わる。
『――本日夕方ころ、春日部市○○のコンビニエンスストアに、強盗が入りました』
(家からわりと近いな……物騒だな……)
[add]
『犯人は店員を包丁のようなもので切りつけ、金を出せ、と言いました。しかし店員が大声を出すと、男は何も盗らずに逃走しました。
県警は、強盗致傷事件として捜査を開始し、防犯カメラの映像を公開しました。
――こちらが、その映像です』
そしてテレビには、防犯カメラの映像が流れる。
……そしてオラは、そこに映る犯人が、誰かに似ていることに気が付いた。
(……あれ?これって……)
肥満体質、メガネ、ぼろぼろの服、ボサボサの髪……
「――ッ!?う、嘘だろ!?これって……まさか……!!」
「――ニュース、流れちゃったんだね……」
「――ッ!?」
突如、背後から四郎さんの声がかかる。
すぐに後ろを振り返ると、そこには、四郎さんが立っていた。魂の抜けた、脱け殻のような、弱々しい笑みを浮かべながら……
――そしてその手には、包丁が握られていた。
全身の毛が逆立った。心拍数は一気に上昇し、背中に嫌な汗が流れる。
「……よ、四郎さん……」
「……ごめんね……しんちゃん……」
――テレビでは、繰り返し防犯カメラの映像が流れる。
そしてそこに映るのは、四郎さんだった。
「――さて……しんちゃん、出発しようか……」
「……」
オラは、黙って車のエンジンをかけ、発車した。
後部座席には、包丁を持った四郎さん。
そしてその隣には……
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