【※涙の物語】「クレヨンしんちゃん22年後の物語」ファンが作った作品が公開され、日本中が涙!!

~数時間前~

「――駆け落ち!?ど、どういうこと!?」

オラの家において、あいちゃんに問い詰めた。
しかしあいちゃんは、あくまでも淡々と答える。

「その通りの意味です。私と、どこかへ旅に出ましょう」

「旅って……」

するとあいちゃんは、表情に影を落とした。

「……お願いします、しんのすけさん」

そしてそのまま、深々と頭を下げた。

そう思い立った理由は言わなかった。聞けば答えてくれたかもしれないけど、どうしてだか、聞こうとは思わなかった。

それは、きっと彼女の口から、誰にも促されることなく聞きたかったのかもしれない。

彼女が何を思い、何を感じたのか……それは、オラが容易く聞けることではないのかもしれない。

そう、思った。

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だからオラは、あいちゃんを連れて電車に乗った。

……実のところ、黒磯さんには密かに連絡を入れている。警察に届けられたら色々と面倒だろうし。

黒磯さんはすぐにでも迎えに行くと言ったが、オラが断った。

それがあいちゃんの意志であることを告げたら、黒磯さんはそれ以上止めなかった。

そしてただ一言、オラにこう言った。

「――お嬢様を、よろしくお願いします……」

「――うわあ!しんのすけさん、見てください!海がとっても綺麗です!!」

電車を降りると、目の前には一面の海が広がっていた。

その駅は、海岸沿いにある小さな駅。駅員はいないようで、いわゆる無人駅のようだ。

降りたのはオラ達だけ。……というより、ここまで来ると、電車に乗っているのはオラ達だけだった。

ボロボロのホームにも、オラ達しかいない。

高台にあることから、裾には景色が広がっているが、遠巻きに見ても誰もいない。

……それにしても、駅からの光景は、オラですらも声を漏らしてしまうものだった。

見事に晴れた空と、空の色を写した海は、遠くに見える水平線で交わる。

空気には潮の香りが漂い、遠くから波の音が微かに聞こえていた。

まさに、この絶景を独り占め……もとい、二人占めしている気分だった。

「しんのすけさん!早く早く!」

あいちゃんは、オラを駅の出口へ引っ張っていく。

彼女は、白いワンピースを着ていた。ひまわりの服だ。

もともと肌の白い彼女は、その服がよく似合う。

少し大き目の帽子を被っていて、まるで避暑地に来たお嬢様のようだ。実際にお嬢様だけど。

それにしても、こうやって間近で見ると、やはりあいちゃんはかなりの美人だと分かる。

電車に乗っていた時も、彼女はジロジロと見られていた。

電車の中で不釣り合いなほど、彼女だけ別の世界の人間のように思えた。

そんな彼女と二人っきりでいることに、少しだけ違和感を覚える。

それほどまでに、彼女はまるで絵本の中から跳び出して来たかのように、純然とオラの前にいる。

海岸際に来たオラ達は、砂浜に座って海を眺めていた。

波の音以外は聞こえない。

波音の演奏会をしばらく楽しんだ後、あいちゃんは静かに話し始めた。

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