「誰だろう……」
掃除を一時中断し、玄関に向かう。そして鍵を開け、少し古くなった玄関を開けた。
「――はい」
「……こんにちは、しんのすけさん」
そこには、笑顔で会釈するあいちゃんがいた。
「あれ?どうしたのあいちゃん……」
「あら、私が来てはいけないんですか?」
あいちゃんは、少し意地悪な笑みを浮かべる。
「い、いや……そんなわけじゃないけど……」
戸惑っていると、彼女はクスリと笑う。
「……お邪魔しても、いいですか?」
「……あ、ああ。どうぞ」
そしてオラは、あいちゃんを家に招き入れた。
「――ずいぶん、片付きましたね」
あいちゃんは、そう呟きながら部屋を見て回る。
「まあね。オラの荷物、ほとんどないからさ。一人にはもったいないくらいの家だよ」
笑いながら、言ってみた。
するとあいちゃんは、顔を赤くして俯いてしまった。
「……ん?どうしたの?」
「……い、いえ……それにしても、静かですね……」
「え?あ、ああ……そうだね……」
「……」
「……」
[add]
……なんだか、不思議な空気が部屋中に満ちる。
「……私で、よければ……」
しばらく俯いていた彼女は、小さな声で話してきた。
「え?」
「……私でよければ、ご一緒に……」
「……」
……また、部屋は静まり返った。オラも、下手に喋れなくなっていた。
二人揃って、居間に立ったまましばらく黙り込む。でも、何だかこのままじゃいけない気がした。
震える口に力を込めて、ゆっくりと口を開いてみる。
「……あ、あのさ……」
「……は、はい……」
「……今度よかったら、二人で――――」
―――プルルルル
「―――ッ!」
「―――ッ!」
突然、静かな部屋に電話の音が鳴り響く。体をビクリとさせたオラ達は、すぐに音の方を振り返る。
「な、なんだ……電話か……」
一度彼女に目をやる。彼女は、頬を桃色に染めて、困ったような笑みを浮かべていた。
何だか照れ臭かったオラは、少し重い足取りで電話に向かった。
「……はい、野原ですが……」
「――聞いてよしんちゃん!!」
受話器を耳に当てるなり、叫び声が耳を貫いた。
咄嗟に受話器を耳から離し、改めて話をする。
「……ま、まさおくん?」
「そうだよしんちゃん!――それより、聞いてよ!!」
まさおくんは、かなり慌てていたようだ。
「どうしたのさ、いったい……」
「あのね!僕、ねねちゃんに告白したんだ!!」
「……マジで?」
「マジだよ!大マジだよ!!そしたら、ねねちゃん、言ってきたんだ!“好きな人がいる”って!!!」
(……あちゃー)
思わず、手を頭に当て上を見上げた。
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