「――ただいまー!」
大きな声を出して、ひまわりが帰って来た。そしてスーツのまま、台所へ駈け込んで来た。
「お兄ちゃんお腹空いた!今日のごはん何!?」
「クリームシチュー。好きだろ?」
「うん!大好き!」
ひまわりは目を輝かせながら、鍋の中を覗きこむ。そして大きく匂いを嗅ぎ、満足そうに息を吐いた。
「こらこら。先に手を洗ってきな。ごはんは、その後だ」
「ええ!?いいじゃんべつに……」
「だ~め!」
「ぶー……」
渋々、手を洗いに行った。これも何度目の光景だろうか。
行動が全く進歩しない妹に、少しばかり不安を感じる。
これじゃ、嫁の貰い手もないだろうな。
「いっただっきま~す!」
「いただきます」
今のテーブルを二人で囲み、晩御飯を食べ始める。
普段着に着替えたひまわりは、一心不乱にシチューを食べていた。
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「――うん!さすがお兄ちゃん!すっごくおいしい!」
「ありがと。……それより、会社はどうだ?」
「会社?……う~ん、あんまり面白くないかも……」
「そりゃそうだ。会社ってのは、面白くもないところだ。面白くないことをするから、お金を貰ってる。基本だぞ?」
「そうなんだけどね……なんていうか、つまんないの。会社の業績はまあまあなんだけど、先輩に面倒なオバハンがいてね。やたらと、目の敵にしてくるんだぁ……」
「ああ、いるいる、そういうの。……まさかとは思うけど、気にしてんのか?」
「私が気にすると思う?」
「いや全然」
ひまわりは神経が図太いからなぁ……これも、母ちゃんによく似ている。
「ただ、面倒なんだよね、そういうの。嫉妬するのは分かるんだけど、それなら私以上に実績積めばいいだけだし。それをしないで、ただ因縁だけ付けてくるってのが気に入らないんだ」
「……そうか……お前も、大変だな」
「うん。まあね」
あっけらかんと、ひまわりは答える。まったく大変そうには見えないが……
食事を終わったひまわりは、風呂に入る。
「着替え、ここに置いとくぞ」
「は~い」
風呂の中から、籠った声を出すひまわり。ひまわりは、とにかく風呂が長い。
何でも、少しでもカロリーを消費するためとか。無駄な抵抗だと思うんだが……
「……お兄ちゃん?今何か、失礼なこと思わなかった?」
お前はエスパーか……
「……あんまり長風呂するなよ?この前みたいに、のぼせて倒れちまうぞ?」
「ああ!話を誤魔化した!!やっぱり思ってたんだ!!」
……こういう感が鋭いところも、母ちゃんに似てる……。
脱衣所を出ようとした時に、ふと、ひまわりが言ってきた。
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