……やはり、何かあったようだ。
ひまわりの話し方が、無駄に明るい。こういう時は、何かをオラに隠しているパターンだ。
伊達に彼女と長く過ごしているわけではない。彼女の癖など、オラにはお見通しだった。
……問題は、何を隠しているのか、ということ。
話しの感じから、おそらくは風間くんとの何かだろう。
……しかしまあ、男女の仲に親族が首を突っ込むのもアレだったので、オラは気にせず、食事の用意を始めた。
今日のご飯は、焼き魚にしよう。
「――しんのすけさん、昨日はお疲れ様でした」
次の日、出勤するなり、あいちゃんはコーヒーを持って歩み寄ってきた。
「ああ……ありがとう、あいちゃん」
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「すみませんでした。本来、あの仕事はしんのすけさんがすべきことではなかったのですが、人手が足りず……」
「いやいや、全然大丈夫だよ。むしろ、久しぶりに思いっきり働いたって感じだったし」
少しオーバーに、手足を伸ばしてみる。
それを見たあいちゃんは、クスクスと笑っていた。
「そう言ってくれると、こちらも気が楽です。……それはそうと……」
ふと、あいちゃんが話題を変えて来た。
「あの、しんのすけさん。……風間さんから、何か話はありませんでしたか?」
「え?風間くんから?……いやぁ、何もないけど……」
「そうですか……。それが先日、噂で聞いたのですが……〇△企業が、海外に新たな支社を作るらしいのですが……」
「〇△企業?風間くんの会社……」
「はい。そしてその支社の経営を、若い者が任されたらしいのです。――その人の名前が……」
「………まさか……」
何か、嫌な予感がした。
オラの顔色が、瞬時に変わったのかもしれない。あいちゃんは、少し躊躇するように、口を開いた。
「……はい。風間……という人らしいのです……」
「………」
……考えるまでもないだろう。それはおそらく、風間くんに違いない。
海外の支社を任される若い社員でその苗字なら、彼しかいないはず。
……でも、もしそれが本当なら……
「………ひまわり……」
思わず、その名前を口にしていた。
あいちゃんは、ただ険しい顔をして、オラを見つめていた。
仕事終わり、家に向かう。
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