――幸せそうに、朗らかに笑うその笑顔……それは、確かさっき幼稚園で見た……
(………………まさか……)
……オラは、いつから錯覚していたのだろうか。
ねねちゃんが気になっているのが、まさおくんかチーターである、と……
(………まさか……ねねちゃんが言ってた、“気になる人”って………)
オラの中で、バラバラのパズルのピースが、一つになった。
そんなオラの前を、ねねちゃんとぼーちゃんは並んで歩く。とても、幸せそうに……
……さすがのオラも、まさおくんに同情するしかなかった。
確実に彼は今、かすかべ一の、不幸な青年であるのだから……
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オラ的まさおくんの悲劇から、1ヶ月ほどが経過した。
まさおくんは、いまだにねねちゃんの本当の気持ちに気づいていないようだ。
そういう言い方だと、実はねねちゃんがまさおくんを好きなように聞こえるが、そういうわけではない。
日本語とは、同じ言い方でも様々な意味合いを持つものだと、一言添えておくことにする。
さて、オラはというと、会社であいちゃんが重役会議に出席している間に、あいちゃんの仕事部屋の掃除をしていた。
もっとも、もともと綺麗な部屋なわけで、掃除といっても、ビッカビカの机をさらに磨き上げるように拭くしかないのだが……
それはそうと、最近あいちゃんの機嫌が悪いことが多々ある。
黒磯さんに強く当たるし、たまにオラにも飛び火している。いったいぜんたい何事だろうか。
会社の経営は順調そのもの。あいちゃんの企画した事業も大当たり連発。
その見事な手腕を発揮させ続ける彼女は、成功とは裏腹に、時折思いつめたような表情をしている。
ボディーガード(ほぼ執事)としては、少しばかり心配なのは、言うまでもないだろう。
オラがコーヒーを作っていると、重苦しい音を上げてドアは開かれ、あいちゃんは帰ってきた。
「………」
あいちゃんは、やはり不機嫌な様子だ。
一直線に椅子に向かい、どかりと重い音を鳴らしながら座り込む。
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