あいちゃんが言っていたことが本当なら、風間くんは海外の支社に向かう。そしてそこに、永住する。
……それなら、ひまわりは……
(……付いて、行くんだろうな……)
そう考えると、心の中に穴が空いた気分になる。
……でも、鳥はいつか巣立ちをして、家族から離れていく。それが、今かもしれない。
それはとても寂しいことだと思う。だけど、それが一番ひまわりが幸せになることだと思う。
それなら、オラは……
「……ただいま」
重い体を引きずるように、家に帰り着いた。
「お帰り!お兄ちゃん!」
ひまわりは、いつもと変わらない笑顔を向けていた。でもこれも、そのうち消えてしまうのかもしれない。
……それに、それは話しにくいことでもあるだろう。オラは、背中を押すことにした。
「……ひまわり」
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「うん?どうしたのお兄ちゃん?」
髪を揺らしながら、ひまわりは首を傾げた。
「……風間くんから、何かなかったか?」
「………え?」
ひまわりは、固まった。やはり、話を聞いていたようだ。
「今日さ、聞いたんだよ。風間くんが、海外に行くことを……もちろん、聞いてるんだろ?」
「………」
ひまわりは、表情を落としていた。
それから、オラ達の間に沈黙が流れる。居間の方から、テレビの音が小さく聞こえるだけだった。
玄関に立つオラ。廊下で動かないひまわり。
――とても、長い時間が流れたように感じた。
「……ひまわり……あのさ―――」
「――別れたよ」
ひまわりは、オラの言葉を遮るように、早口でそう言った。
「……え?」
「私達、もう別れたの。言ってなくてごめん」
「い、いや……別れたって……」
「――ほらお兄ちゃん!晩御飯出来てるから、ご飯にしよ!私、お腹空いちゃった!」
そう言うと、ひまわりは再び笑顔をオラに見せ、奥へと向かう。
「お、おい!ひまわり!」
彼女は、オラの呼び掛けには答えなかった。
(……別れた……別れたのか?)
その時、オラの中では二つの想いが入り混じる。
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