「そんなの、ただの見せかけだよ!フェイクだよ!本性はもっと、黒いはずだよ!」
まさおくんは自信満々に言い放つ。……しかしまあ、相変わらず言ってることは無茶苦茶だ。
どうするか悩んだけど、さすがにそろそろ言うことにした。
「……ねえ、まさおくん。オラは、キミの友達だからさ、だからこそ、敢えて言わせてもらうね」
「……え?な、何を……」
「――いい加減にしなよ、まさおくん」
「――ッ!?」
オラの言葉に、まさおくんは言葉を飲み込んだ。
[add]
「……しんちゃん……」
「まさおくん、正直に言うけど、今のキミは見てらんないよ。ねねちゃんが好きなのは分かるし、盗られたくない気持ちも分かる」
「……」
「……でもね、今のキミはあんまりだ。話してもいないのに勝手に全部決めつけて……そんな姿を見て、ねねちゃんがキミに好意を持つと思ってるの?」
「……そ、それは……」
「キミにはキミのいいところがあるんだ。だから、もっと素直にねねちゃんと向き合いなよ。
……今度、オラとフタバ幼稚園に行こうよ」
「……うん。ありがとう、しんちゃん……」
まさおくんは、ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
正直、こんなことを言うのは忍びないところもある。だけど、まさおくんのことを知るオラだからこそ、言う必要があった。
でも最後は、まさおくんも分かってくれた。
それだけで、言って良かったと思う。
「……しんちゃんと一緒に、敵情視察だ……」
まさおくんは、ぼそりと呟く。
……分かってくれたんだよね?
それから数日後、オラとまさおくんは、フタバ幼稚園に来ていた。
久々に見る幼稚園は、少しだけ古ぼけて見える。あれから20年以上だし、それもしょうがないのかもしれない。
それに、建物も校庭も、外の遊具も、物凄く小さい。
……それでも、独特の匂いと、踏み締める土の感触は、昔のままだった。
あの頃オラ達は、この幼稚園で毎日を過ごしていた。
絵本を読んで、歌を歌って、絵を描いて、走り回って、笑いあって、時々ケンカして……
ここに立つだけで、まるでモノクロの投影機のように、昔の光景が脳裏に甦っていた。
「……懐かしいね、まさおくん……」
そう呟き、まさおくんを見る。
まさおくんは、まるで威嚇するかのように、キョロキョロと見渡していた。
(……おい)
「……おや?キミ達は……」
ふと、オラ達のもとに、白髪のおじいさんが近寄ってきた。
「……あ、勝手に入ってすみません。オラ……僕達は、ここの卒業生なんです。久々に、遊びに来ました」
当たり障りなく、挨拶をする。
すると老人は、朗らかに笑った。
「……もちろん、覚えていますよ。よく来てくれましたね、しんのすけくん、まさおくん――」
……園長先生は、優しく微笑む。その表情もまた、昔のままだった。
「それにしても懐かしいですねぇ。もう、20年以上になるんですよね」
オラとまさおくんは、教員室に案内された。
室内には誰もいない。遠くからピアノの音と、子供たちの元気な合唱が聞こえていたから、おそらく授業中なのだろう。
「はい。顔を出せず、すみませんでした」
「いえいえ。あなた方が元気であれば、それで私は満足なんですよ」
園長先生はニコニコとしていた。
口ではそう言っていても、やはりこうしてオラ達が顔を出したのが嬉しいんだろう。
それにしても、園長先生の雰囲気はすっかり変わっていた。
続きをご覧ください!