すぐそばに当たり前にあった抱きしめる体とか手をつなぐ先とかがなくなって、
好きだ好きだ言ってくる相手がいなくて現実的に生きていけないんじゃないかと思った。
俺は料理が好きでよく作るんだけどこの3日は何にも作る気がしなかった。
嫁を許す、許さないの結論は、話し合う前からもうこの3日間で出てた。
俺が、やっぱり嫁とやり直したい。
ただ、問題は山積みだ。
嫁が本当に俺のことが好きじゃなくなっているなら、
たぶん嫁がどんなに自分ルールを作ったって意味がないだろう。
嫁がいくら理想の夫婦を演じようとしたところでそんな結婚生活に意味なんてないと思う。
二つ目は相手の男のこと。
嫁の会社にどうこう言う気は無いが、少なくとも男が二度と近づかないように手を打つ必要はある。
三つ目はAちゃんのこと。
あの煽りがなけりゃこんなことにならなかったんじゃないかと思うと、
俺の中ではAちゃんへの腹立ちが収まらないし、できれば二度とかかわってほしくはなかった。
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さて、嫁とは土曜日に家で会った。
この3日間でこっちの気持ちは固まっていたけど正直話がどう転がるかはわからなかった。
さっき書いたみたいに そもそも嫁の気持ちが俺に無いのであれば
やり直すことはダメだろうと思っていたし。
もしかしたら、これが何か神様がくれたチャンスで、
嫁が他の男を好きになった理由が俺にあるのであれば、きちんと話を聞きたいと思った。
嫁は綺麗に化粧をしていた。
ちょっと会わなかっただけで隣の綺麗なお姉さんみたいに見えた。
ただ、鼻がかぴかぴになってむけてた。
お茶を飲む習慣もない俺たちはあっという間に手持ち無沙汰な感じになった。
「外泊するって、よっぽど仕事忙しかったの?」
「・・・年始から急にお客さんが発注したいって連絡きてね。」
みたいにぎこちない会話を繰り広げる。
嫁は一生懸命笑顔を浮かべようとしてたけど、明らかに引きつってた。
「話をしたいんだけど、その前に幾つか知りたいことがある」
嫁は真剣な顔をしてうなずいた。
「あの、男のことをちゃんと教えて」
今日話しあいたいのはこいつのことじゃなかったけど、
嫁の口からこの男のことだけは聞いておきたかった。
嫁の話はAちゃんとのメールのやりとりから察したものと大筋は一緒だった。
既婚者の嫁に手を出してくるくらいだから相手も結婚しているんじゃないかと気になっていたが、
男は独身とのことだった。年齢は30代で、ITコンサルの会社を経営しているらしい。
自分が思っていたよりスペックが高くてへこんだ。
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