しかしそんな心配は杞憂に終わり、
しばらくは何もなく過ぎた
だがそれからも妻はしばしばおかしな行動を見せた
トイレットペーパーを何度も買ってきたり、
道に迷ったりということがあった
そして最大の疑いは辛くないカレーを作ったことだった
出てきたカレーを一口食べて「なんでこれ辛くないの」
とキツい口調で聞いた
決して怒っていたわけではない。
日々の疑いが真実である可能性を考えると
怖くてたまらなかった
妻も一口食べて「あれそうだねごめん」と言った
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妻が何か言ってくれるなら良かった。
しかしカレーを食べるまで気づいていないような素振りだった
病院に行こうと決心した
「若年性アルツハイマーです」医師はそう告げた。
その口ぶりから軽い病気ではないことが伺えた
若年性は進行が早く、治療手段はほとんどないと言われた
「30歳まで生きられるかは保証できません」
目の前が真っ暗になった
俺はすぐに仕事を辞めようと思った
親父の財産が多かったこともあり、
しばらく食べるのに困らないだけの貯えはあった
上司に事情を告げると「休職という形にするから
奥さんの病気が良くなったら戻ってこい」と言われた
給料の安い会社だと不満を言ってきたが、
感謝の気持ちで涙がこぼれた
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